親が老人ホームに入った場合の税務上の取扱い(相続税・所得税)
親が老人ホームに入った場合の税務上の取り扱い(相続税・所得税)
今回は親が老人ホームに入った場合の税務上の取り扱いについてご紹介いたします。
老人ホームに入ることで生活の本拠が変わってしまうことで取扱いに注意が必要です。
<前提>
平成26年までは甲さん(親・収入なし)はAさん(息子)と同居していたが、平成27年から甲さんが老人ホームに入った場合
(1)Aさんの所得税
①平成26年
甲さんは同居老親に該当し、58万円の扶養控除となります。
②平成27年
甲さんは老人ホームへ入所したことにより、その老人ホームが居所となるため同居とならず、同居老親の58万円の扶養控除は適用されません。
しかし、Aさんが甲さんの生活費を負担している場合は老人扶養の48万円の扶養控除となります。
(2)甲さんの相続税(小規模宅地等の特例)
①自宅に居住しているときに甲さんの相続が開始した場合
自宅は甲さんの居住の用に供されているため、特定居住用宅地等として80%の減額を受けられます。
②老人ホーム入所後に甲さんの相続が開始した場合
老人ホームへ入所することにより自宅が空家になるため、被相続人の居住の用に供されていたが問題になっていましたが、
こちらは改正があり、平成26年1月1日以降に相続が開始した場合は次のように取り扱います。
・改正前は、次の状況のときは被相続人の居住の用に供されていたと取り扱われていました。
イ 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。
ロ 被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。
ハ 入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
ニ その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。
しかし、有料老人ホームには、終身利用権を取得するタイプが多く、小規模宅地等の特例が受けられないことがありました。
・改正後は、次の要件を満たすときは被相続人の居住の用に供されていたと取り扱うようになりました。
イ 被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと
ロ その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居又は入所していたこと
ハ 相続開始着前の自宅の状況が
空家になっている または 入居前から自宅で被相続人とともに暮らしていた親族が引き続き暮らしている
これまでは老人ホームに入所することで自宅が小規模宅地等の特例を使うことができないことで、相続税の負担が重くなっていました。
今後、今まで以上に老人ホームを利用する方が増えていくと思います。
改正により終身利用権を取得しないという要件がなくなったことには非常に大きいと思います。
星野