2015年07月21日 所長・スタッフブログ

退職金は、長期間の勤務に対する報奨や退職後の生活保障的な性格があるため、給与や賞与などと比べて、非常に税制優遇がされています。

主な優遇措置は次の通りです。

①課税所得を算定する際、勤続年数×40万円(勤続年数が20年を超える場合は、800万円+70万円×20年を超える年数)が退職金の金額から控除されます。

②①の控除後の金額の2分の1だけが課税対象となります。

③所得税は累進課税を採用しているため所得が多ければ多いほど税率が上がりますが、退職金については他の所得と合算されず、単独で税額が計算されます。

具体的には、30年勤務した会社から2,000万円の退職金を支給を受けた場合の所得税額は152,500円です。
給与で年間2,000万円受給した場合の所得税額は4,255,500円になりますので、この優遇がいかに大きいかが分かります。


では、同年中に2か所以上の勤務先から退職金の支給を受けた場合はどうなるでしょうか?

この場合には、上記①の控除額(退職所得控除額)の計算にあたっての勤続年数は、退職金の支給を受けた勤務先のうち最も長い勤続期間により計算します。ただしこの最も長い期間と重複していない期間がある場合には、この最も長い期間に加算します。


具体例です。

①A社 平成15年4月1日入社  平成27年3月31日退職(12年)

②B社 平成25年6月1日入社  平成27年6月30日退職(2年1か月)

この場合には、A社の12年が最も長い勤続期間であり、A社の勤続期間に重複していないB社の平成27年4月1日から平成27年6月30日までの3か月がA社の勤続期間に加算されます。

したがって勤続期間は12年3か月で13年となり、退職所得控除額は520万円となります。


しかし退職金の支給がB社からしかされなかった場合は、勤続年数2年1か月で3年となり、退職所得控除額は120万円となります。

仮にA社から100万円、B社から500万円の退職金の支給があった場合、退職金合計600万円に対する所得税額は20,000円となりますが、A社からは0円、B社からのみ500万円の退職金の支給があった場合、退職金合計500万円に対する所得税額は95,000円となります。

あまりないことかもしれませんが、この場合収入額が減ったにもかかわらず、税額が上がるというおかしなことになっていますね。


詳しくは割愛しますが、B社から受ける退職金が特定役員退職手当等だった場合でも、A社から退職金の支給があれば、上記例と同じように勤続年数13年、退職所得控除額は520万円となります。(ただし②の適用はなく2分の1にすることはできません。)2分の1にできない分、A社からの退職金の支給の有無で税額差はさらに大きくなります。


退職日が年をまたぐと別の規定が適用されますが、同年中の退職日だと考える余地がいろいろとありそうですね。

和知

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