事業承継税制(特例措置)の要件
今回は、この制度の適用を受ける為に必要な会社の要件についてお話します。
まず、次の会社のいずれにも該当しないことが要件になります。
(1)上場会社
(2)中小企業者に該当しない会社
(3)風俗営業会社
この要件のうち、資産管理会社について説明します。
資産管理会社とは有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産の保有割合が
総額の70%以上の会社(資産保有型会社)やこれらの特定資産からの運用収入が総収入金額の
75%以上の会社(資産運用型会社)の事をいいます。
では、資産保有型会社と資産運用型会社とは具体的にどのようなものなのか。
①資産保有型会社とは・・・贈与又は相続による事業承継を行った日が属する事業年度の
直前の事業年度から申告書の提出期限までの帳簿上の資産価額総額
に占める特定資産価額の合計が70%以上となる会社の事をいいます。
②資産運用型会社とは・・・直近の事業年度における有価証券等の配当金や、利息、不動
産賃収入、資産の譲渡益等の資産運用によって得た総収入金額が
75%以上を占める会社の事をいいます。
上記の資産保有型会社の特定資産とは・・・下記の5つが該当します。
1.国債/地方債証券・株券・その他金融商品取引法に規定する有価証券と他の持株会社の持分
※対象となる中小企業者の特別子会社の株式や持分の場合には、特別子会社が
「資産保有型子会社」もしくは「資産運用型子会社」に該当しない場合には、
有価証券や持分から除外されます。
2.対象となる中小企業の所有不動産で、現在自社で使用していないもの
※遊休地や第三者に貸している不動産など、自社の事務所・工場・店舗等として使用して
いる不動産以外が全て対象となります。
※役員社宅は第三者に貸している不動産となり、従業員社宅は自社で使用している不動産
となるため注意が必要です。ちなみに、不動産賃貸業をメインとしている企業の場合には、
原則として資産保有型会社となり事業継承税制の対象外となるケースが多いです。
3.会員権(ゴルフ/スポーツクラブ/リゾート等)など施設の利用に関する権利
※この会員権の販売を目的としている販売業者の場合には、販売目的や事業用として所有し
ているものは除外されます。
4.動産(絵画/彫刻/工芸品/骨董品等)や貴金属(金/銀等)、宝石など
※この資産の販売を目的としている販売業者の場合には、販売目的や事業用として所有し
ているものは除外されます。
5.現預貯金等
※後継者や同族関係者への貸付金や未収金の額も加算する必要があります。
ではなぜ、国税庁が資産保有会社及び資産運用会社において一定割合(70%・75%)を超える収入金額を
得ている場合に相続税納税猶予制度の適用外としているのでしょうか?
例えば不動産の大家業をしておられる地域の地主様などは自ら保有している不動産資産を活用して
大きな利益を生む一方で、多額の納税義務を負う事になります。
この納税負担を軽減する目的で多くの不動産の大家は自分が所有している不動産資産の管理業務などを
行う資産管理法人の設立を検討するものです。
このような合法的な節税を抑止すべく国税庁は資産管理会社の設立に際して、一定収入割合を超える
資産管理法人に対し相続税納税猶予制度を適用外としているのではないかと思われます。
次回は、後継者の要件をお話します。
n.k