2018年07月11日 所長・スタッフブログ

 

本日は、平成30年度税制改正のうち、法人税法に関する改正点をご紹介いたします。

 

平成30年度の税制改正は、企業の設備投資や賃上げを後押しする内容となっています。

逆に、(大企業限定ですが)業績が好調にも関わらず、設備投資や賃上げをしない場合は、

一定の税制優遇措置が適用できなくなるという内容も含まれています。

 

それでは、早速それぞれの内容について見ていきましょう。

 

 

①所得拡大税制の改組

 以前より、従業員に対して賃上げを行う企業に対しては、法人税を減額する制度がありました。

 この制度を所得拡大税制といい、大企業向けと中小企業向けがあります。

 

 【中小企業向け】

  今回の税制改正では、この所得拡大税制を受けるための要件が変更され、また、税額控除額

  が大きくなりました。改正後の内容は以下の通りです。 

 

  ■通常要件

   〇要件    : 継続雇用者給与等支給額※1の対前年度増加率≧1.5% 

   〇税額控除額 : 給与等支給額※2の対前年度増加額×15%(法人税額の20%が上限)

   

  ■上乗せ措置

   〇要件    : ①継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧2.5%   

            ②当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費×1.1 

                    又は 

             中小企業経営強化法の認定に係る一定の証明あり

   〇税額控除額 : 給与等支給額の対前年度増加額×25%(法人税額の20%が上限)

 

   ※1 前期・当期の全ての月に給与を支給した従業員のうち、雇用保険の一般被保険者に該当する人に対して支給した給与の額。
   ※2  当期の従業員に対する給与(賞与等含む)の総額。役員や役員の親族等に対するものは除く。

 

 

 

当期の給与等支給額が前年を下回っている場合は、税額控除額が0となりますので、この制度は

使えません。

 

例えば、「前期・当期にずっと在籍していた人に対する給与は上がったが、短期間で働くパート・

アルバイトに対する給与が減った」という場合などは、給与等支給額が前年を下回ることも想定

されます。

 

なお、参考に改正前の要件を下記いたします。

 (参考)改正前の要件

 〇要件    :①雇用者給与等支給増加額/基準雇用者給与等支給額 ≧3%

         ②雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額

         ③平均給与等支給額  > 比較平均給与等支給額

 

 〇税額控除額 : 雇用者給与等支給増加額 × 10%(一定の要件を満たす場合22%)

 

 

 

改正前は給与総額の前年比較に加え、基準年度との比較や、一人当たり平均給与の比較など様々な

要件がありました。

 

また、改正前の継続雇用者は、前期・当期のいずれにおいても1月以上給与をもらっていた人が対象

でしたので、従業員の入れ替わりが多い業種では対象者の選定が大変でした。

 

今回の改正で要件が簡略化され、分かりやすくなった印象です。

 

【大企業向け】

 内容は中小企業向けと同じですが、適用要件と税額控除額が異なります。

 

  ■通常要件

   〇要件    : ①継続雇用者給与等支給額の対前年度増加額≧3%

            ②国内設備投資額≧当期の減価償却費の総額の90%

   〇税額控除額 : 給与等支給額の対前年度増加額×15%(法人税額の20%が上限)

 

  ■上乗せ措置

   〇要件    :(上記の要件に加えて)

           当期の教育訓練費≧前期・前々期の教育訓練費の平均×1.2

   〇税額控除額 :給与等支給額の対前年度増加額×20%(法人税額の20%が上限)

 

 

中小企業と比較すると、賃上げや教育訓練費の割合が増加する、設備投資の要件が入るなど、ハードルが

高くなっています。

また、税額控除額も中小企業の方が多いので、中小企業に対してより優遇する内容となっています。

 

②情報連携投資等の促進に係る税制

  平成30年度の税制改正で新たに創設された税制となります。

 

  データ連携・高度利活用することで生産性向上を図るなど「生産性向上特別措置法」の要件を

  満たすものとしてと認定された計画に基づいて投資を行うことで、特別償却又は税額控除を

  受けることができる制度です。

  なお、こちらの制度は最低投資合計額が5,000万円以上となっております。

 

■通常要件

要件

優遇措置

生産性向上等に係る計画の認定を受け、対象設備※を購入

※ソフトウェア、器具備品、機械装置

①購入した資産の特別償却(30%)

     又は

②購入資産の価格の3%の税額控除

(法人税額の20%が上限)

 「継続雇用者給与等支給額の対前年増加率≧3%」の要件も満たす場合は税額控除5%。

 

 ③租税特別措置の適用要件の見直し(大企業向け)

  冒頭に述べましたが、業績が好調(所得が前年より増加)にも関わらず設備投資・賃上げをほぼ

 行わない大企業については、一部の税制の優遇措置が使えなくなりました。

 

 使えない税制は「生産性の向上に関連する税制」で、「研究開発税制」や上述した「情報連携投資等

 の促進に係る税制」等があります。

 

 ■一部の税制が適用できなくなる要件

  ①当期の所得金額>前期の所得金額

  ②継続雇用者給与等支給額≦0%

  ③国内設備投資額≦当期の減価償却費×10%

 

 ちなみに、研究開発税制とは一定の研究開発に関する支出をした場合に、税額控除が受けられる

 制度です。

 

 平成30年度の税制改正ではないため、詳しい説明は省略しますが、研究開発税制は、次の3つに 

 分かれます。

 

  ①総額型

   試験研究費の総額の一定割合を法人税から控除できる制度です。

   税額控除割合は試験研究費の増加割合に応じて6%~14%(中小企業は12%~17%)です。

 

  ②オープンイノベーション型

   試験研究費のうち、特別研究機関等、大学等、その他の者と共同で行う試験研究、特別研究

   機関等、大学等、中小企業者等へ委託して行う試験研究に要する費用(特別試験研究費といい

   ます)の一定割合を法人税から控除できる制度です。

 

  【控除額】

   特別研究機関等と行う試験研究費 × 30%

   その他の者と行う試験研究費   × 20%

 

  ③高水準型

   試験研究費の売上高に占める割合が10%を越える場合、その超えた部分について税額を控除

   できる制度です。

 

 【控除額】

  (試験研究費の額-平均売上金額×10%)×控除率※

  ※控除率=(試験研究費割合-10%)×0.2

 

 

いかがでしょうか。

上記の税制は申告の際に一定の明細書を添付することで適用ができますので、設備投資や賃上げを行った

場合は何か優遇措置があるか確認されてみると税金が安くなるかもしれません。

 

今後も税制優遇措置等についてご紹介させていただければと思います。

 

嶋村 真崇

 

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