交際費の内容と間違えやすい経費
事業を経営していくうえでは様々な経費を支出することとなります。
取引先に向かうための旅費交通費や、文房具を購入した場合の消耗品費、その他水道光熱費やインター
ネット・電話代等の通信費などがあります。
その中で、いろいろと判断に迷うことが多い科目に「交際費」があります。
日々会計を行うなかで、以下のような疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。
・取引先と食事にいって打合せをしたけど、これは会議費になるのか交際費になるのか・・
・政治団体に拠金しているけど、交際費か寄附金なのか・・
また、交際費は一定の金額を超えると税務上は経費として計上できなくなってしまいます。
そのため、なるべく交際費にしなくてもよいものは交際費から外した方が税務上はメリットがあります。
■税務上の経費として認められる交際費の額の上限
①資本金が1億円以下の法人(資本金5億円以上の法人の完全子会社は除かれます)
→年800万円または接待飲食費の50%のいずれか大きい額まで
②資本金が1億円超の法人
→接待飲食費の50%まで
※個人事業主の場合には限度額はありません。
そこで、今回は交際費とその他の費用の基本的な考え方について紹介いたします。
交際費とは
■交際費の考え方
まず、交際費の定義ですが、国税庁のホームページに以下の通り記載があります。
定義自体は非常に長いですが、交際費に該当するかの判断は以下の3要件を満たすかどうかがポイント
となります。
・事業に関係ある者(※)に対する支出であること
・支出目的が、事業関係者等との間の親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであること
・行為の形態が、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
※取引先のほか、間接的に利害関係のある者や株主、従業員なども含みます。
例えば、今後取引を開始しようとしている者と食事やゴルフをした場合、取引先に対してお中元など物品
を贈答した場合は上記の要件を満たしますので、交際費に該当します。
■交際費から除かれる費用
次の費用は、交際費の範囲から除かれることとされています。
①飲食等のために要する費用で、支出金額を参加者の数で割った金額が5,000円以下である費用
(専らその法人の役員・従業員又はその親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)
②専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
③カレンダー、手帳、扇子、うちわ等の物品を贈与するために通常要する費用
④会議に関連して、茶菓、弁当等の飲食物を供与するために通常要する費用
⑤新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、
又は放送のための取材に通常要する費用
①以外はすべて通常要する費用の範囲内であることが必要です。
通常要する費用の金額は明示されていないため、その時の状況等から総合的に判断することとなります。
なお、今は廃止になっていますが、東京国税局の交際費に関する抽出基準では以下のような基準が
あったようです。あくまで参考ですが一つの目安としていただければと思います。
来客食事代 「1人当たりおおむね3,000円程度」
手土産代 「おおむね3,000円程度」
業務に伴う従業員の飲食代 「1人当たりおおむね3,000円程度」
支出金額が通常より高いと思われるときは、なぜその金額が必要であるかを合理的に説明できるように
しておく必要があります。
また、通常の範囲を超えると判断された場合は、超える部分の金額だけでなく、その全額が交際費や給与
等に該当しますので、注意が必要です。
<参考>国税庁HP抜粋
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に
関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいま
す。)のために支出する費用をいいます。
ただし、次に掲げる費用は交際費等から除かれます。
(1) 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
(2) 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専らその法人の
役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であっ
て、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
イ 飲食等の年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食等に参加した者の数
ニ その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が
明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
ホ その他参考となるべき事項
(3) その他の費用
イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常
要する費用
ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のため
に、又は放送のための取材に通常要する費用
交際費と寄付金の違い
■寄附金とは
寄附金とは、金銭や物品を贈与したり、サービスを無償で提供することをいいます。
なお、寄附金は反対給付を求めない(見返りを求めない)支出となります。
■交際費と寄付金の判定
①事業に関係のある者への支出か
→直接事業に関係のない者(神社や公立学校等)に対する支出であれば、原則寄附金になります。
②支出目的が、事業関係者等との間の親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるか
→見返りを求めない支出であれば、基本的には寄附金となります。
例えば、取引先に対するお中元は交際費に該当しますが、神社の祭礼等の寄贈金や政治団体に対する拠金
は、直接事業に関係のある者に対する支出ではないため、寄附金に該当します。
※神社や公立学校等が得意先の場合等は、その支出が交際費に該当することもありますので、個々の実態
により判定することが必要となります。
交際費と会議費の違い
■会議費とは
会議費とは、社内での会議、取引先との打合せや会議に関して使用された費用のことです。
会議室の賃料や資料の印刷代、会議時に配布する弁当代や飲料代で通常要する費用のものは会議費
となります。
■交際費と会議費の判定
交際費と会議費の判定では、取引先との食事代や、会議で提供する弁当・茶菓代がどちらに該当するか
迷うこともあるかと思います。
これについては、上述の「交際費から除かれる費用」の次の費用が参考になります。
・飲食等のために要する費用で、支出金額を参加者の数で割った金額が5,000円以下である費用
(専らその法人の役員・従業員又はその親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)
・会議に関連して、茶菓、弁当等の飲食物を供与するために通常要する費用
上記を参考にしますと、以下のような判定基準となります。
①取引先との飲食代
→原則、一人当たり5,000円以下であれば会議費となります。
(科目は会議費でなくてもよいですが、交際費から外すことができます)
②会議等で通常要する費用
→当該費用は、茶菓代等も含めて会議費となります。(5,000円超でも可)
※通常要する費用を超えると判断された場合は、交際費等に該当します。
■補足
「社外の者との1人あたり5,000円以下の飲食費」についても、交際費で処理しても構いません。
ただし、冒頭で記載したように、交際費の場合は税務上の経費として落とせる金額に上限があります。
会議費にはそのような上限がありませんので、会議費で落とせるものは会議費にした方が税務上は
メリットがあります。
ただし、交際費が年800万円に満たない資本金1億円以下の中小企業者等や個人事業主の場合は、
会議費・交際費どちらで処理しても税金上は同じになります。
交際費と福利厚生費の違い
■福利厚生費とは
福利厚生費とは、従業員の福利厚生の目的で与える給料以外の報酬などを指し、従業員全員を対象と
したものをいいます。例えば、次のような費用が該当します。
・慶弔見舞金(結婚・出産祝い金、病気見舞金、香典など)
・健康診断費用
・忘年会、新年会、歓送迎会、社員旅行などレクリエーション費用
・社宅、保養所
上述した「交際費から除かれる費用」のうち、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、
旅行等のために通常要する費用」は、この福利厚生費に該当することとなります。
※通常要する費用でないと判断された場合は、交際費もしくは給与となります。
■交際費と福利厚生費の判定
①従業員全員を対象としたものか
→全員が対象であるものは福利厚生費、一部の従業員が対象であるものは給与または交際費と
なります。(全員が対象であれば、一部の人が出席できない場合も福利厚生費になります)
例えば、従業員のうち数名と仕事後に食事にいった費用は、原則として給与又は交際費に該当します。
ちなみに、交際費に該当する場合で、その食事代が1人あたり5,000円以下であれば交際費から除くこと
はできるのでしょうか。
答えは、交際費から除くことはできません。
交際費から除かれる費用として紹介した次の費用には、従業員等は除かれる旨の記載があるためです。
・飲食等のために要する費用で、支出金額を参加者の数で割った金額が5,000円以下である費用
(専らその法人の役員・従業員又はその親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)
交際費と広告宣伝費の違い
■広告宣伝費とは
広告宣伝費とは、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図して支出した費用です。
例えば、次のような費用が該当します。
①製造業者又は卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用又は一般
消費者を旅行、観劇等に招待するために要する費用
②製造業者又は卸売業者が、金品引換券付販売に伴い、一般消費者に対し金品を交付するために要する
費用
③製造業者又は販売業者が、一定の商品等を購入する一般消費者を旅行、観劇等に招待することを
あらかじめ広告宣伝し、その購入した者を旅行、観劇等に招待する場合のその招待のために要する
費用
④小売業者が商品の購入をした一般消費者に対し景品を交付するために要する費用
⑤一般の工場見学者等に製品の試飲、試食をさせる費用(これらの者に対する通常の茶菓等の接待に
要する費用を含む。)
⑥得意先等に対する見本品、試用品の供与に通常要する費用
⑦製造業者又は卸売業者が、自己の製品又はその取扱商品に関し、これらの者の依頼に基づき、継続的
に試用を行った一般消費者又は消費動向調査に協力した一般消費者に対しその謝礼として金品を交付
するために通常要する費用
一般消費者向けのものは、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図しているものが多いと思われます
ので、原則として広告宣伝費に該当します。
なお、上述の「交際費から除かれる費用」のうち次のものは、広告宣伝費に該当します。
・カレンダー、手帳、扇子、うちわ等の物品を贈与するために通常要する費用
■交際費と広告宣伝費の判定
①支出の相手が事業に関係のある特定の者か不特定多数か
→不特定多数であれば。原則として広告宣伝費になります。
②支出の目的
→宣伝効果を目的としたものであれば、原則として広告宣伝費になります。
交際費と売上割戻の違い
■売上割戻とは
一般的には「リベート」のことを指します。
売上量に応じて、商品代金等のうち一定額を控除するものになります。
たくさん商品やサービスを購入してくれる得意先に対する厚遇の一環となります。
■交際費と売上割戻の判定
次の要件のすべてを満たす場合は、売上割戻に該当します。
・支出の相手先が事業に関連のある得意先であり、相手先で収益に計上されること
・売上高や売掛金回収等と比例した一定の基準があること、または営業地域の特殊事業、協力度合い
等に該当する費用であること
・支出が金銭、事業用資産又は少額物品(3,000円以下)のいずれかであること
最後に
いかがでしたでしょうか。
金銭を支出する、物品を提供するといった行為であっても、その行為の目的や相手先や金額等により、
それぞれ適用される科目名が異なってきます。
また、どの費用に該当するかにより税務上経費に落とせる金額も変わってきますので、それぞれの特徴を
理解して適切な費用に計上していくことが重要と思います。
嶋村 真崇