「所得拡大促進税制」適用要件の一部見直しについて
平成29年度税制改正において、「所得拡大促進税制」の適用要件が一部見直されました。
この「所得拡大促進税制」は平成25年より実施されており、一定要件はありますが、会社が従業員の給与等をアップさせると税金のメリットが受けられるという制度です。今回は、中小企業者等に焦点を当ててお話をさせていただきます。
「所得拡大促進税制」の適用要件は大きく3つあります。
<適用要件>
①適用を受けようとする事業年度の従業員への給与等の支給額(雇用者給与等支給額)が、基準とされる事業年度の給与等の支給額(基準雇用者給与等支給額)より3%以上増加していること
雇用者給与等支給増加額 ≧ 基準雇用者給与等支給額×3%
②適用を受けようとする事業年度の従業員への給与等の支給額(雇用者給与等支給額)が、前事業年度の支給額(比較雇用者給与等支給額)以上であること
雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額
③適用を受けようとする事業年度の従業員1人当たりの月平均の給与額(平均給与等支給額)が、前事業年度の従業員1人当たりの月平均の給与額(比較平均給与等支給額)より増加していること
平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額
※平均給与は、継続雇用者(国内雇用者のうち適用年度及び前事業年度において給与等を支給している者)のみで算定をします。新入社員や前事業年度に退職した方は含みません。
上記の適用要件を満たすと、以下のいずれか小さい金額分の控除を受けることができます。
・従業員への給料等の支給額の増加分(雇用者給与等支給増加額)の10%
・調整前法人税額の20%
上記の制度が、平成29年度税制改正において適用要件が一部見直され、中小企業にとってはメリットの大きい税制措置がなされました。
以下の要件を満たすことにより、これまでの制度に上乗せをして税額控除を受けられることになります。
<要件>
適用を受けようとする事業年度の従業員1人当たりの月平均の給与額が前事業年度より2%以上増加していること
(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額) / 比較平均給与等支給額 ≧ 2%
※2%未満の増加の場合と新設法人については、10%(改正前からの税額控除部分)のみとなります。
<改正後>
「雇用者給与等支給増加額×10%(改正前からの税額控除部分)」+「①または②のいずれか小さい金額×12%(上乗せ部分)」
①雇用者給与等支給増加額 (基準雇用者給与等支給額からの増加額)
②雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額 (前事業年度からの増加額)
※税額控除の限度額は、調整前法人税額の20%となります。
今回の改正よって、中小企業にはメリットの高いものになりました。
これにより、企業の収益が増加して雇用者の所得がアップし、消費が進むことで景気の拡大に繋がっていくのではないでしょうか。
堀部真也