住宅ローンについて考えよう
今回は税務から少し離れて、住宅ローンについて考えてみましょう。
2016年の2月にマイナス金利が導入されてから、住宅ローンの金利は大きく下がってきています。35年固定金利で1%台前半のものを見ることもありますし、変動金利だと1%を大きく切ったものも多く見かけます。一言で金利と言っていますが、いろいろな種類の金利がありますので、それぞれどういったものか見ていきましょう。
①店頭金利=基準金利
店頭金利とは、各金融機関が設定している住宅ローンの基準となる金利で、金融機関によっては基準金利と呼ばれることもあります。いわばメーカー希望小売価格のようなものです。
一般的に、変動金利型商品の店頭金利は、短期プライムレート(優良企業に対して、1年以内の期間で貸し出す際に適用する最優遇貸出金利)に1%を上乗せしている場合が多く、長期固定型商品の店頭金利は、長期国債の利回りと連動しています。
②適用金利=優遇金利=表面金利
適用金利とは、店頭金利から割引(優遇)をした後の、実際に利息を計算するために適用される金利をいいます。この適用金利を抑えることによって、毎月の住宅ローンの返済額を抑えることができます。
③実質金利
住宅ローンを借りるにあたり、保証協会の保証料や団体信用生命保険の加入が必要となるなど、金利以外の費用が必要になることがあります。それらの費用も含めて、実質的に金利として換算した場合の金利を実質金利といいます。
経済学でいう実質金利とは意味が異なりますので、住宅ローンの金利を考えるにあたっての造語として捉えていただければと思います。
では、私の個人的な考えを混ぜながら、住宅ローンについて考えていきましょう。
①固定金利より変動金利
一般的には固定金利より変動金利の方が適用金利は低くなっています。ただし、金利の変動によって返済額も変動するリスクがあります。しかしながら、個人的には変動金利の金利の変動リスクはそれ程大きくないと考えています。
なぜなら、日本銀行が公表している短期プライムレートの最頻値は平成21年以降変動していないため、多くの金融機関では変動金利の店頭金利は変更されておりません。この店頭金利が変わらない限り、変動金利の返済額には影響を及ぼしません。つまり、すでに変動金利で借りている方については、マイナス金利導入の際も利率の変更は行われておりません。バブルの頃に比べるとかなり変わっておりますが、1995年以降は現在と同程度の率に落ち着いています。
個人的には固定金利と変動金利の金利差を埋めるぐらいまで短期プライムレートが変動する可能性は低いと考えています。また、変動金利の方が固定金利に比べて金利が低い分、毎月の返済額が抑えられます。返済額を抑えていた分でしっかり貯蓄しておけば、短期プライムレートの上昇により金利が上がるような場合でも、繰り上げ返済をすることで、変動金利の金利上昇リスクはかなり抑えられると思います。
②実質金利で考えましょう
住宅ローンの借入コストは利息以外にも、保証会社の保証料や銀行の事務手数料などいろいろかかります。金利は低いけれど、保証料がやたら高いといったこともありますので、すべてのコストを集計して考える必要があります。住宅ローンを少し気にするだけで、100万円以上も支払総額が変わることもあります。住宅の購入は数千万円になることが多いため、金銭感覚がおかしくなりがちですが、シビアに捉えていきましょう。
住宅ローンの借換えの際も実質金利で考えましょう。借換えの際に一番かかるコストは、抵当権の設定による登記費用です。また新しい金融機関の手数料や、旧金融機関への一括返済の手数料など、思った以上にコストがかかるため、金利の低下だけではコスト負けする可能性があります。理想的には、他金融機関で見積もりをした一番安い金利をもって、現在の金融機関での金利交渉をすることでしょうか?現在の金融機関で金利の変更をされた場合、手数料はほとんどかかりません。
③10年間は繰上げ返済しない
住宅を購入後10年間は住宅ローン控除という税優遇を受けることができます。住宅ローン控除の適用額は、住宅ローンの年末残高を基に計算します。居住開始年によって変わりますが、基本的には住宅ローンの年末残高の1%が控除可能額です。適用金利が1%を切っているなら、金利+税金で考えた場合、繰り上げ返済をしない方がお得になります。手持ち現金があるうちに返済しておこう!と思われても、10年間はそのままにしておきましょう。
いろいろ書きましたが、住宅ローンはいろいろな金融機関で比較することが重要です。その上で、それぞれの返済方法のメリット・デメリットを理解して、よりご自身に合った住宅ローンをお選びください。
少しでもご参考になれば幸いです。
和知 秀永