個人住民税の住宅ローン控除
平成28年分の確定申告の申告期限が近づいて参りました。私の担当分はほぼ完了して、ほっと一息といったところです。疲れが溜まってくるころですが、あとひと踏ん張り頑張りましょう!
さて、表題の件ですが、住宅ローン控除限度額のうち、所得税から引ききれなかった金額は、翌年度の個人住民税から控除することができます。
控除可能額は、上記の引ききれなかった金額を限度として、前年分の所得税の課税総所得金額の7%と136,500円のいずれか低い金額までとなります。
所得税の課税総所得金額が195万円に満たない方は、住民税からの控除額に「所得税の課税総所得金額の7%」という制限がかかることになります。
例えば下記の場合です。
所得税の課税総所得金額 1,500,000円
所得税額 75,000円
住宅ローン控除限度額 300,000円
住民税からの控除額
① 300,000円-75,000円=225,000円
② 1,500,000円×7%=105,000円
③ 136,500円
上記①~③のうち、いずれか低い金額 105,000円
つまり、所得税の課税総所得金額が下がれば下がるほど、住民税からの控除額が下がることになります。
したがって年末調整の段階で住宅ローン控除の適用により、源泉徴収税額が0円になった方は、所得税の確定申告で医療費控除などを適用することで、所得税の課税総所得金額が下がり、住民税からの住宅ローン控除額も下がってしまう可能性があります。これを避けるために、住民税についてのみ医療費控除の適用を受けるため、住民税の確定申告書を提出することも検討しなければなりません。
では、事業所得の方など、確定申告で住宅ローン控除の適用を受ける方はどうでしょうか?
所得税の課税総所得金額が195万円に満たない方について、所得税については、あえて所得控除の適用を外し、課税総所得金額を上げて、住民税からの控除額を上げます。さらに住民税の確定申告も行い、こちらは所得控除も適用も受けた上で、住宅ローン控除の適用を受けられれば、トータルでの税負担を下げることが出来ます。
例えば上記の例で住宅ローン控除の適用を受ける前の住民税額が160,000円の場合、控除後の住民税額は、160,000円-105,000円=55,000円となります。
しかしあえて、所得税の課税総所得金額を195万円で申告すれば、住民税からの控除額は、下記の通りとなり、住宅ローン控除後の住民税額160,000円-136,500円=23,500円となります。
住民税からの控除額
① 300,000円-97,500円=202,500円
② 1,950,000円×7%=136,500円
③ 136,500円
上記①~③のうち、いずれか低い金額 136,500円
そもそもこの方法が可能かどうか、市役所に問い合わせてみました。
A市役所「出来ますよ」
B市役所「それは出来ませんね」
C市役所「調べますので、少々お待ちください」
そしてC市役所の回答は、住民税からの住宅ローンの控除額の計算に使用する所得税の課税総所得金額は、住民税の確定申告書から逆算するということでした。つまり、あえて所得税と住民税の所得控除額を変えて確定申告をしたとしても、住民税からの控除額は、所得税の確定申告にて所得控除を適用したとして計算されるようです。確定申告後に住民税のみ更正の請求をしたとしても、結果は変わらないということでした。
ちなみに今回上記に当てはまりそうな納税者の方は、B市の方でした。長々と書きましたが、結果として今回のアイディアは使えなさそうです。A市役所の回答の真意は分かりかねますので、もしかすると自治体によって処理方法が違うのかもしれません。同様の例がありましたら、管轄の市町村に問い合わせされるのがよいと思います。
なお平成29年度の税制改正で、上場株式等の配当等について、所得税と住民税で異なる課税方法を選択できるということが明確化されます。これまでも異なる課税方法の選択は可能でしたが、市町村によって対応が違うということがあったようです。税金に限らず、自治体によって手続き方法が変わるものが数多くありますので、そのあたりの統一を望むところです。
和知 秀永